グレープフルーツを食べなさい
 ――気がつけば、上村のキスを受け入れていた。

 両手で顔を引き寄せられ、唇を開く。舌を絡め、窒息しそうなほど苦しいキスをした

 息を継ぐ間もないほど激しいキスに、色んな感情でぐちゃぐちゃだった頭の中が真っ白に塗り替えられていく。

 そのまま二人もつれるようにソファの上に倒れこんだ。

 上村の大きな手のひらが私の肌の上を滑り、触れられた場所が熱を持つ。体中に広がっていく。

 それは、上村の体温なのか、それとも自分が発する熱なのか。それすらも判然としないほど、互いの肌がピタリと吸い付いた。

 上村の唇が耳、首筋、鎖骨と順序良く私の体を滑り降りていく。濡れた感触が膨らみのその先に届くと、たまらず私は悲鳴をあげた。

 心地よくて、このままじゃきっと身体が溶けてしまう。思考の全てを奪い取られ、心も身体も上村に支配されていく。

 今この瞬間、私の全ては上村で満たされた。一夜の酔いに、全てを忘れた。


 その夜私は、ただひたすらこの年下の男に溺れた。



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