グレープフルーツを食べなさい
 聞こえてきた冷たい声音に、ハッと息を呑んだ。

 この声……上村だわ。

 でも、本当に?

 普段会社で見せる姿とあまりにかけ離れた上村の口調に、私は愕然とした。

「ねえ、達哉……お願い」

「いい加減諦めて帰れよ」

 上村はそう冷たく言い放つと、上村のシャツの背中に縋った女性の手を振り払った。

「飽きたんだよ。俺には未練なんてない」

 上村はその場に泣き崩れる女性をそのままに、こちらへと歩いてくる。

 次の瞬間、覚束ない視界の中で、上村と視線がぶつかった気がした。

「……三谷先輩?」


 ――声が、出ない。


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