涙と ホームランと ありがとう
やるしかない
カキーン!「ツーアウトだ!走れ!」鬼監督の声が響いた。
「アウトォ!ゲームセットッ」無情にも響く審判のコール…
「あぁあ、また負けた。くそっ」呟く竜也。
「まっいつもの事じゃん」竜也の女房役の真澄が励ましとも諦めとも付かない言葉をかける。
「ほら整列だぞ行こう」チーム内きってのスラッガー光雄がうながした。「8‐3でファイターズの勝ち!互いに礼ッ!」審判の号令の次に響く両チームの声
「したぁっ」「したぁ」互いの健闘讃えあって相手チームのベンチに行き挨拶。自チームのベンチに戻り両チームのエールの交換。
小六の竜也が所属する少年野球チーム、三鷹サイファーズ。決して弱いチームではないが決勝までは行った事がない、いいとこ準決勝止まり。ここ一番に弱い。
今の試合も春の大会の準決勝だった。
女房役のキャッチーの真澄が心配そうに声をかける。
「竜也ぁ、お前足痛いのか?なんか投げ方が少しおかしかったよ!」サイファーズのエース竜也が応えた「うん、左の膝が痛かったんだよね。今は痛くないけど」「そっか、ならいいけど。今度は夏の大会だな」「うん」集合ッ。鬼監督の声がした。厳しくて怖い監督で有名な人だ…。主力の六年生が今は五人、つい二ヶ月前は八人いた。
厳し過ぎる監督が嫌で辞めた二人と指導方針に疑問を感じた親が辞めさせた一人の計三人が抜けた。
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