Wonderful DaysⅢ【berry’s cafeバージョン】
戻ったロビーは、やっぱり混雑していて。
よく見ると、荷物も少なく軽装の人が多い。
多分、私たちのように日帰りで来ていた観光客なのだと思う。
「申し訳ございません。当ホテルは既に満室となっておりまして、これ以上お部屋をご用意することができないのです」
申し訳なさそうに説明するフロントスタッフに
「どうしよう……」
「帰りの道も閉鎖されてて帰れないのに」
「このまま外に放り出されたら、寒くて死んじゃうよ」
今にも泣き出しそうな女性たちは、途方に暮れたように項垂れる。
「只今、近辺のホテルや旅館に空きがあるか確認しておりますので、お待ちいただけますでしょうか?」
「「「お願いしますっ!」」」
フロントの後ろでは、他のホテルに連絡を取っているスタッフが慌ただしく動いていた。
「……………………」
「……………………」
今日中に帰れない私たちも、どこかに泊まらなければならないのだけれど。
───今、「満室」って言ってたよね?
ってことは、今入って来たばかりの私たちも泊まれないわけで。
もし、近辺のホテルや旅館で部屋が取れなかったら……
最悪の結果を想像して顔面蒼白になった私を空いているソファーに座らせた魁さんは
「ちょっと待ってろ」
そう言って少し離れたところで、どこかに電話をかけはじめた。