忘れた
うそ、だろ…


「い、今って…平成18年、じゃないのか?」


すがる思いで、奈緒に訊く。


奈緒は悲しそうに、首を横に振った。


「今は平成26年だよ」


そんなバカな。


昨日、学校で授業を受けたことだって、鮮明に覚えているのに。


部活帰りに、太一(たいち) たちと飯食いに行ったんだ。


家出した姉ちゃんのことで落ち込んでる俺を励ましてくれて…


そうだ、姉ちゃん。


「姉ちゃんが死んだってのは…」


起き上がろうとすると、全身に鋭い痛みが走った。


思わず顔を歪める。


「勇介、ダメだよ。まだ寝てなくちゃ」


奈緒が心配そうに言った。


「母さんを呼んで来てくれ」


俺が言うと、すぐに奈緒は立ち上がり、病室を出て行った。


そして奈緒と入れ替わりで、母さんが病室に入って来た。

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