忘れた
「信じらんなくても、信じてもらわないと困るよ。

お前の失った8年間、俺たちは確実に生きてきたんだから」


太一は真剣な目で俺を見た。


「そう、だよな…」


そう。太一は26歳で、俺も26歳なんだ。


そろそろ受け入れないとな…


黙り込む俺に、太一は話題を変えた。


「そういえば、さっきの話だけどさ。奈緒って元カノ。

あの子、お前の姉ちゃんに似てるよな」


「それ、俺も思ったんだよ。

姉ちゃんに似てるから好きになったのかな…

何にも覚えてないんだよな」


「ふうん。その子、ここに来たのか?」


「ああ、目が覚めた日に来てくれた。

…泣かせちゃったけどな」


「えっ、何で?」


俺はそのときの状況を説明した。


太一は、うーん、と唸った。


「お前ら、本当はまだ付き合ってんじゃないの?

じゃなきゃ、泣かないだろ」


「それは無いよ。だってあの子が言ったんだぞ? もう分かれてるって」

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