忘れた

世間は狭い

あっという間に土曜日がやってきた。


いつものみんなを誘ってみたけど、一緒に来てくれたのは梨沙だけだ。


「ねえ、奈緒?

本当にあたしまでタダでいいのかな」


「いいんだって。奈緒ちゃんの友達は俺の友達や、だって」


梨沙は、アハッと笑った。


あたしたちは、ライブが始まるまでの間、ざわつく会場内で立って話しているところだ。


大きな広い空間に、満杯の人々。スポットライトに照らされた無人のステージ。


少々薄暗い。


「にしても、びっくりしたよね。こんなに人がいるなんて。

何であたしなんかに来て欲しかったのか、全然分かんない」


あたしが言うと、梨沙はケロッと言った。


「ほーんと、奈緒ってモテモテだよねえ」


「は? 何の話?」


「いいのいいの、こっちの話。で、開さんってどんな人なの?」


梨沙は興味深そうに訊いてくる。


「面白い人だよ。なに、もしかして梨沙、狙ってる?」


「どんな人かによるわ」

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