忘れた

まだ好きだよ

速水聡の来訪以来、約1ヶ月が経過した。あれから、俺の病室に奈緒が来なくなった。


今日はクリスマス。


病院内は、色とりどりの飾り付けでとても華やかだった。


そんな様子とは対照的に、俺の心は晴れなかった。


頻繁に来てくれていた奈緒が急に来なくなったことで、俺はなんとも言えない喪失感に襲われていたのだ。


最近、姉ちゃんのことよりも、奈緒のことを考えている気がするんだよな…


何でだろ…


俺は、ようやく使いこなせてきたケータイ電話を手に取り、奈緒との写真を眺めた。


ーーゆうすけ! 早く! コッチコッチ…


思わず後ろを振り返る。今、確かに女の声がした。


しかしそこにあるのは白い壁。


「なんだ…?」


俺は独り言をつぶやいて、ケータイに目線を戻す。


ーーおそろい! こっちがゆうすけのね…


まただ。


今度は映像まで脳裏に浮かぶ。


ここは遊園地か…


目の前の長身の女の子は、にっこり笑って俺の手を引いていく。


長い髪に、この笑顔…


もしかして、もしかしなくても、この子は…


奈緒?

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