サヨナラなんて言わせない
「・・・・・・手当たり次第女食ってた最低男だったよ」

顔を歪めてしばらく黙り込んだ彼女が口を開いて出た言葉は、
自分の心を抉るほどショックなものだった。

彼女の表情が俺を軽蔑しているのがわかる。

最初に会った時も彼女は確か似たようなことを言っていた。
俺が女にだらしがないと。

・・・・・・本当に?
当然だが全く記憶にない。
それでも、心のどこかでそんなことはないと全力で否定している自分がいる。
そんなはずはないと。
・・・・そうあって欲しいという己の願望がそうさせるのか。

ほんの少ししか一緒にいないが、彼女が嘘をつくような人だとは思えない。
ならばそれが真実ということなのだろうか。
胸騒ぎがする。
彼女のあの表情、とても苦しそうで今にも泣きそうな顔で歯を食いしばっていた。


・・・・まさか、俺と彼女は深い仲だったのだろうか?
その上で俺は・・・・
その可能性を考えるとあれだけ彼女が俺を毛嫌いするのも納得できる。

そんな・・・・俺が彼女を傷つけたのか?


考えれば考えるほど泥沼にはまっていき、その夜は一睡もできなかった。
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