サヨナラなんて言わせない
彼が今どういう気持ちでいるのかが痛いほどわかる。

彼は俺と同じだから。


彼女の気持ちが欲しくて、でも簡単にはいかなくて、
そのもどかしさにもがき苦しんでいるのだ。
その上彼女に想いを寄せる他の男が目の前に現れたのだから、
焦るのも当然なのだ。


気の毒だが俺だって引くわけにはいかない。

自分がこんなに強気に出られる人間だなんて今初めて知った。
そんな自分の変化に一番驚いているのは他でもない俺自身だ。


・・・・・それだけ譲れない想いがある。

絶対に、彼女を失うわけにはいかない。

もう逃げない。
全力で彼女を取り戻すと決めた。

そのために必要ならば、どんな困難にだって立ち向かう。
その想いが俺を強くしていた。


扉越しにエレベーターに消えていく彼の姿を静かに見送った。
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