サヨナラなんて言わせない

早く彼女の顔を見たい・・・・


俺の心はそんな想いで埋め尽くされていた。
何一つわかることはなくとも、彼女が自分自身にとってとても大切な人であることは違いない、不思議とそう思えた。自分がこのマンションの前にいたことも、彼女が俺を避けていることも、全てを含めてきちんと思い出さなければいけない。


だがその日彼女はいつもの時間になっても帰ってくることはなかった。
手付かずですっかり冷めてしまった料理をぼーっと眺める。

10時、11時・・・・
やがて日付が変わってしまった。
明日は祝日で休みだ。
だからどこかに出掛けているのかもしれない

・・・・まさか男性と一緒にいるのだろうか?
俺を置いてくれたから考えてもいなかったが、もしかして恋人がいるのか?
・・・・いや、彼女ならば恋人がいるのに異性を家に置いたりしないはずだ。
だがもしいたとしたら・・・・?

考え出したら胸がざわざわと落ち着かなくなる。
俺は彼女のことを何一つ知らない。
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