サヨナラなんて言わせない
俺は一度その場を去ると、その足で事務所へと向かった。

絶対に諦めることはしない。
何とか話を聞いてもらうしかない。

その上で彼女が俺を受け入れられないというのなら・・・・
それはその時にきちんと受け入れる。


だが今は。
まだその時ではない。



再び電車で移動した俺は誰もいない事務所へと足を踏み入れた。
自宅マンションへは帰らなかった。
無機質で寂しすぎる空間は、今の俺にはあまりにも冷た過ぎる。
それに、仕事に没頭している間は余計なことは考えずにすむ。

俺は自分のデスクに腰掛けると、すぐにパソコンを立ち上げて次に取りかかる予定の個人事務所の設計に意識を集中させていった。


そして昼頃になるとまた彼女のマンションへと移動する。
だがそこでも反応はない。
再び仕事に没頭した後、夕方頃にまた訪れる。





この週末そんなことを繰り返したが、結局一度も涼子に会うことはできなかった。
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