失 楽 園

┗それ、は起こる





「姉さん……?」


後ろの窓を見ると、
そこには信じられない光景があった。

白いワンピースをはためかせ、
裸足のままで
こちらに向かってくる姉さん。

何かを叫んでいるが、
僕の耳にはそれが聞こえない。


「Excuse……」


運転手にそう言いかけて、やめる。


 姉さんは僕を裏切ったんだ。
 姉さんは、僕を裏切ったんだ!!


それでも僕は姉さんから
目を離すことが出来なかった。

姉さんは片目の不自由な状態で、
よろめきながら走っている。



そして『それ』は起こった。





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