失 楽 園
……――「ママ?」
くい、とエプロンを引っ張られ、
私は我に還った。
ハッとして見えもしない目を
下に向ける。
「ママ。どうしたの?」
そこにいたのは、優蛇だった。
「……優蛇こそ。どうしたの」
私が手をさ迷わせてなんとか
優蛇の頭を見つけ、
撫でてやると優蛇は泣きそうに
震えた声で言った。
「ママ。ほうちょう、ほうちょう……」
段々フェードアウトしていく
優蛇の声。
そこで初めて、
自分は包丁を握って
手首に押し当てようと
していたのだと気が付いた。