臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平達が着替えを終えて練習場に入ると、民主主義の心を忘れた梅田が竹刀を片手にウロウロしていた。

 沸騰(怒り)の一歩手前だったようだ。流石は石山である。梅田に怒られたキャリアはダテではない。


 梅田は一年生達に言った。

「お前ら、今日から新しいパンチの習得に入るから覚悟しておけ!」

 先生は話を続けた。

「今日はロープ(縄跳び)は無しだ。まずはシャドーを四ラウンドやれ」


 一年生達はラウンド開始のブザーと同時に、シャドーボクシングを始めた。

 そのシャドーボクシングなのだが、最近は最初から自由に動いていい事になっていた。

 足の動きやパンチ、ブロッキングを組み合わせてそれぞれ動く。

 梅田と飯島は、あまりスピードをうるさく言わないが、腰を反る事とパンチを打つ際に肩を回す事はしきりに強調していた。


 一年生がシャドーボクシングをしている間、梅田と飯島は先輩達の指導の後だったせいか、一息入れる感じで談笑している。

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