臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平がワンツーストレートを少し上向きに打つと、不思議にも左フックがスムーズに打てていた。

 内海は、パンチを少し上向きに打つことで下半身が下に押し付けられて安定し易い事を康平に話す。

 康平は左フックがスムーズに打てるようになった。


「いい感じじゃねぇか。ただ左フックを打つ時に、胸を開くなよ。……いや、背中を広げる感じで打ってみろ」


 ズバーン!

 ボクシング場にミットの音が響く。


「お前パンチあんな。左フックは、打てば打つ程強く打てっからドンドン打てよ」


 その後、左アッパーや左ボディーブローを交えたコンビネーションを繰り返す。


 五ラウンドのミット打ちが終わると内海が言った。


「コンビネーションを打つ時、康平は左のパンチを強く打つのを意識した方がいいな。その方が連打しても、バランスが安定しそうだからよ」



 練習が終わり、帰ろうとした康平と健太に内海が呼び止める。

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