臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 次のラウンド、有馬は梅田に合わせて前後左右に動く。

 その後、他の三人も交代でリングに上がり、梅田に合わせて動く練習を二ラウンドずつ行った。

 梅田はミットを嵌めているが、パンチを一発も打たせないラウンドが続いた。

 終わって梅田が全員に話した。

「お前ら、今までのメニューで構えだけのラウンドは、前後左右の動きに変える。但し、六対四のバランスは徹底しろ」


 梅田の話はここで終わらない。

「お前ら今から本当のミット打ちだ。もう一度有馬からリングに上がれ」


 梅田は再びリングに上がった有馬へ、ミット打ちのルールを説明した。

「片手で構えたらジャブだ。それは右手も左手も関係ない。両手で構えたら、ワンツーだ。両手を重ねて構えたら、後ろの手のストレートだ。やってみろ」


 梅田がゆっくり右手を上げて構える。有馬はオーソドックススタイル(右構え)なので、左ジャブを打った。

 今度は梅田が両手で構えた。

 パパーン!

 ワンツーストレートの当たる音がした。

 そして、両手を重ねて構えた梅田に有馬の右ストレートが伸びる。

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