「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
001:夜明け




昔からよく言われる…永遠に闇に包まれているものなんてないと…
どんなに暗い闇だって、いつかは必ず明るい陽が射すと…



丘の上に腰を降ろし、太陽の動きに合わせて少しずつ顔を上向ける。



そうだね…
確かに深い闇は一生続くわけじゃない。
空に向かって明るい色が少しずつ染み出して、そして空はいつしか明るくなっていく。



だけど……
夕方になれば、これとは逆のことが起きるんだ。
明るい光りは地にのみこまれ、あたりは闇に閉ざされる…



そうだ…
僕は、夕陽…
沈みこむ場所を間違えて、そこから出られなくなった太陽みたいなものなんだ。



いや、違う…
僕は……



嫌な物思いに更けっていた時、僕の目におかしなものが映った。
東雲色の空に浮かぶ「人」のシルエット…
馬鹿な…「人」が空を飛ぶわけなんて…



立ち上がり、眩い光りに目を細めながら、僕はそのシルエットを確かめようとした。
まるで、僕のその気持ちが通じたかのように、おかしなものは僕に向かって近付いて来る。



それは、やはり「人」だった。
蒼く長い髪をなびかせ、とても気持ち良さそうに浮遊する。
変わり行く色の空を泳ぐ魚のように…



「わっ!」



僕は思わず声を上げた。
なぜなら、その「人」が、僕に向かって手を振ったから。
さながら、親しい友人に会った時のような笑顔を浮かべて…
< 2 / 66 >

この作品をシェア

pagetop