「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
009:翼を広げて
「シンファ……君は確かあてのない旅をしてるって言ったよね。
お母さんの故郷に行ってみようとは思わなかったの?」

「……バレたか。
実は、僕は今、母さんの故郷に向かっている。
でも、最初は行くつもりなんてなかったんだ。
だから、わざと違う方角へ向かった。
そして、行く先々で僕は辛い想いをした。
僕の身体のことを悟られないようにとあれこれ工夫もしたけれど、結局はどこでもバレてしまう。
そして、追い出される…
悔しいけど、母さんの言う通りだった。
僕はどこに行っても受け入れてはもらえない。
僕が安心して住める場所なんて、この世にはどこにもないんだ…
そのことが身に染みてわかったから……
実はね……僕は母さんの村に行って……そこで死んでやろうと思ってたんだ。
そして、本当のゴーストになって一生皆を呪ってやろうって……」

「シンファ……」

「……僕のことが嫌いになった?
当然だよね…こんな奴、誰だって嫌いになるよね。
僕はきっと……神様にも嫌われてたんだね。
だから、こんな……」



話しているうちに、僕はたまらない気持ちになっていた。
最悪なことを話してしまった。
人を恨んで、そのあてつけに死のうとしてるなんて打ち明けられて、不快にならない者なんていない。
でも……不思議なことに、アズロは僕に説教地味たことを言うこともなく、僕から離れることもなかった。
ただ、黙りこんではいたけど、変わらず、僕と歩調を合わせて歩いてくれて……



「……ねぇ、シンファ…
お母さんの故郷はここから遠いの?」

「そうだね…もうずいぶん近付いてるとは思うんだけど、これから先はもっと険しい道になると思うよ。
なんたってすごい山の中みたいだから。」

「そう…方角とかはわかってるの?」

「まぁね…行ったことはないけど、母さんから故郷の話はよく聞いたから。」

「そう…じゃあ、大丈夫だね。」



彼は、さっきの僕の言葉をどう感じたのだろう?
沈黙の後のアズロの態度は、少しも変わったところはなかった。
無理をしている様子もない。

訊ねたい気はあった。
「僕のことを嫌いになったか?」と。
彼はその質問に、何も答えてくれなかったのだから。
でも、もしかしたら僕から離れないということが彼の答えなのか?



二人でいると、時の経つのがとても早く感じた。
僕達は早くもまた次の山に登り始め、気がつくとあたりは闇に包まれていて、僕達はその山で夜を過ごすことになった。
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