「異世界ファンタジーで15+1のお題」五
011:溶けた氷




(なぜ……)



あらためて目にした村の風景に、僕は言葉を失った。
乾燥した土地は、アズロが歩く度に土埃を舞い上げる。
立ち尽す朽ち果てた木々は、薄暗くなった村の中で亡霊のように見えた。



(母さんの話とまるで違う……)



一瞬、僕は間違ってしまったのではないかと思った程だった。
だって、母さんが話してくれた村の様子は、どの季節にもその季節毎の色鮮やかな花が咲き乱れ、村全体が花の香りに満たされていたと……
作物もよく実り、鳥の声やむら人達の笑い声が響く楽園のような所だったと聞いていたから。

でも、この前、母さんが村に帰った時には「荒れ果てていた」と、それだけ話した。
母さんはそのことについてはそれ以上話さなかったから、住む人がいなくなったから、寂れてしまったんだと僕はそんな風に考えてた。
これほどまでに荒れ果てているなんて、考えてもみなかった。



(ゴーストの僕には、似合い過ぎる程の場所だ。
これ以上の場所は他にはないよ、きっと……)



アズロは民家に向かってまっすぐに突き進んでいた。
母さんの話によると、ガーランドさんという人が一人だけこの村に残っているって話だった。
だから、あの民家のうちのどれかに……



その時、僕はどこがガーランドさんの家なのかを知った。
窓越しに灯りが灯るのが見えたからだ。



「シンファ!あそこだね!」

「うん、そうだね。」

僕は初めて振り向いたアズロの傍まで小走りで歩を進めた。



「アズロ……この村のこと、どう思った?」

「ずいぶん寂しいっていうか…まるで砂漠みたいだね。
こんな所に住むのは大変だろうね、きっと。
あ……あれって、もしかしたら川だったんじゃない?」

アズロが指差した先には、長く伸びた窪みがあった。
川さえも干からびたというのか?



(一体、この村に何が…?)



「ねぇ、シンファ。
お腹すいたね。
でも、こんな状況じゃ、ガーランドさんに食べるものをねだるのも気が引けちゃうね。」

アズロに頷いた時、不意にその家の扉が開き、中から桶を抱えた若い男が出て来た。
彼は、僕達にすぐに気付いたようで……彼の手から桶が滑り落ちた。
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