プリキス!!



「先輩。」

「あ、ごめん、何か言った?」




片桐君が話しかけてくれてたようだが、考え事をしていて聞こえなかったみたい。



「先輩、もうちょっとしたらソファーが待ってますから、頑張って下さいね。」



体を気遣ってくれてそう言ってくれる片桐君。

実はさっきからゆっくり歩いてくれている。

だからおぶられていても全然酔わない。





感謝の気持ちを片桐君に伝えると、いたずらっ子のように蛍君は言った。



先輩。片桐君じゃなくて、蛍君って呼んでくださいよ。





「ありがと、蛍君。」





東西南北の人とは仲良くならない為に下の名前で呼ぶ気はなかったけれど、蛍君は特別。


優しくて、なんだか暖かい人。


蛍君は名前の通り、蛍みたいな人だ。






「部屋の前まで着いたんで1回下ろそうと思うんすけど、大丈夫です?」


「本当にありがとう。あ、しゃがんでくれなくても降りれるよ。」






東高ヤンキーの巣窟の一番奥。


そこに、どうやら彼はいるらしい。





「さて先輩。……覚悟はいいですか。」




覚悟……ねぇ。



「それなら、ここに来た時にもうとっくに出来てる。」



そう言ってニッと笑えば、蛍君は少し驚いた顔をしてから口角を上げた。



「男前っすね。」



顔を見合わせて頷いた。




ギィィィィと音の鳴るドアを開ければ目の前には赤と黒で纏められたシックな部屋が広がっていて。



部屋の奥に位置するソファー。


そこに、彼は座っていた。






「やっと来てくれた。遅かったね?」






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