プリキス!!



「ちょっと……何今更猫被ってるの?」

「猫なんて被っていません。───急いでいるので失礼しますね。」





まるで……出会った頃に戻ったかのような烏丸の様子。

微笑んでいるけど、それは明らかな作り笑いで。





「ちょっと待ってよ!烏丸!!」






腕を掴むと烏丸は───消えた。

まるで霧のように。






「烏丸?!何処行ったの?!」





「……煩いな。黙ってよ……。」





大声を出して暗闇の中を探していると聞こえためぐの声。





「めぐ、何処にいるの?!」


「何、橘。図々しく“めぐ”、だなんて呼ばないでくれる?」




ひょっこり現れためぐは、今より20cmは身長が低い。


しかも着ているのは、母校である西苑中の制服だった。


そう言えば、烏丸が来てたのも中学のセーラー服だったかもしれない。




「めぐ、烏丸が何処かに行っちゃった……。」

「……烏丸さんと俺になんの関係があるの?もう俺の前から消えてよ。昼寝の邪魔。」




おかしい。

めぐもおかしい。

“烏丸さん”なんて他人行儀な呼び方をするなんて。




ここで俺は気が付いた。



これは夢なんだ。

出会った頃の烏丸とめぐの夢なんだ、と。






────────






「なんか……寝覚め悪い。」



策を練ってるうちにいつの間にか、ソファーで寝ていたみたいで。



「……俺ら、前は本当に距離遠かったんだなぁ。」


あの頃は、まさか俺がめぐの下で働くなんて思ってもいなかったし、烏丸と親友になるなんて想像もつかなかった。






寝起きで、ぼうっとした頭のまま、

俺は烏丸と出会った頃を思い出していた。





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