プリキス!!




「っ……。」


彼女は答えなかった。

正確には、答えられなかった。



何故なら私が、彼女にキスしようと近づいていったから。






――――悪いのは、簡単に“アオ”だと名乗って連れてこられた美蒼ですよ。


先程述べたように私は女癖が悪い。

そして、遊べると分かれば何でもすぐに玩具にしてしまう。


別に気持ちがなくても、快楽を得ることは可能でしょう?


つまらない人生の、暇で暇で仕方がないこの時間を、誰とどうしようと私の勝手でしょう?



幸い私は顔は良い。

だから求めれば、女の子達は皆答えてくれた。



今だって、ほら。

美蒼は目を閉じて来たる時を待っている。




愉しい時間の始まりだと、頭の中ではそう考える。

けれども本心では、少しがっかりしていた。

この子も他と同じかと。

私の心を満たすものに、またもや出会えなかった、と。




あと1センチも顔と顔の距離がないという所で、

カチャリとドアが開いた音がした。




チッと大きな舌打ちに、美蒼も私も部屋の入口を見れば。




「天……こんの、馬鹿!!年中発情期!」




ティーセットを抱えた灰音が、怖い顔で睨んでいた。





< 320 / 422 >

この作品をシェア

pagetop