プリキス!!
「えっと……暫く放課後此処にいさせてもらう事になりました。お世話になります。」
はぁい、と可愛く笑う姫先輩。
「東に襲われたって聞いて凄く心配したんだよ。怖かったでしょ。大丈夫?」
「高橋君が助けてくれたので。」
怪我がなくて良かった、と姫先輩は言ってくれた。
「ねぇ、この前は気がつかなかったんだけど……初伊ちゃんと烏丸志乃さんって親戚か何かなの?」
「姉です。」
「……え?!」
正確に言えば従姉妹だけど、お姉ちゃんも私の事を妹だと人に紹介するし、私もお姉ちゃんを姉だと人に紹介している。
「どうかしました?」
「ううん。志乃さんとは昔からの付き合いだからびっくりしちゃって。」
「え、そうなんですか!?」
意外なところで繋がり発見。
今度お姉ちゃんに聞いてみよう。
ごほんと咳払いをした姫先輩。
「えっと……ゆっくりしてってね。誰か初伊ちゃんにお茶菓子お出しし「あ、大丈夫ですよ!」」
「後輩なんかに気遣いは必要ありませんよ。」
「……そう。でも“お客様”に失礼な真似は……」
本当にお気遣いなくと言うとやっと先輩は諦めてくれたみたいだ。
ただちょっと困ってしまった。
私は姫先輩と仲良くしたいけれど、“お客様”と言う言葉に込められた悪意。
やはり私は姫先輩にあまり良く思われていない。
別に西の姫ポジションなんて狙ってないのに。
てか本当はカナ女だから無理だし。
仲良く……したいのになぁ。
「……あ、橘、果物ナイフ持ってない?恵が起きてたら果物食べさせてあげたいなって。」
「んー……多分彫刻刀なら何処かにあるけど。」
「何を作れっていうの。」
そんな高度な技持ってないから。
出来るのは林檎をむく位だもん。
「ちょっと待ってて、探してくる。」
めぐなら音楽準備室だからと言って、橘は部屋を後にした。
そしてその音楽準備室のドアは何故かボロボロだった。
コンコン、とノックをする。
「……行成?」
「烏丸初伊。」
恵の声は相当掠れていた。