わたしのミカタ
シーン2 サプライズ
   多枝、ベッドに腰掛けテレビをつける。
   テレビでは滝澤が出演する報道番組がやっている。

滝澤 「こんばんは、滝澤クリスタルです。
    連日、上層大気観測衛星『はなぶさ』の一部破片が地上に落下する
    恐れがあると報道がされていましたが、本日十六時頃、
    東京都町田市内に落下し、通行中の男性に衝突しました。
    男性は意識不明のまま病院に運ばれ、現在治療をうけています。
    この人工衛星、個人に当たる可能性は約三二〇〇分の一と
    されていましたが、おとといの会見で藤村官房長官は
    『人体への影響はきわめて低く、国民は通常通りの生活をおくってほしい』
    と述べており、危機管理体制に問題はなかったか、
    今後責任を問われることとなりそうです。では続いてのニュースです。」
カコ 「あたっちゃったんだ。」
多枝 「いたそー。」
ミク 「幸治先輩だったりして。」
多枝 「え?」

   クローゼットから刑事と部下が登場する。
   ミクとカコ、ベッドの上に避難する。

部下 「ここです安さん!」
刑事 「お邪魔しますよ、五木多枝さん。」
多枝 「誰ですかあなたたち!警察を呼びますよ!」
刑事 「失礼。私、警視庁捜査一課の安浦です。」
部下 「同じく五十嵐です。」
多枝 「警察がこんな時間に何のようですか?」
刑事 「あなた、永田幸治さんをご存知ですね。」
多枝 「えぇ。」
刑事 「その永田幸治さんですが、本日の夕方町田市内で人工衛星に衝突し、
    先ほど病院でお亡くなりになりました。」
刑事・部下 「ご愁傷様です。」
多枝 「え?」

   クローゼットから幸治の遺影と棺おけがあらわれる。
   お経と木魚の音がする。
   刑事と部下がクローゼットの前で手を合わせている。

刑事 「亡くなった永田さん、将来有望な埴輪職人だったそうじゃないか。」
部下 「恋人の家に行く途中だったそうっすよ。なんでも恋人が誕生日だったとかで。」
刑事 「しっ、あの子がその恋人だ。」
部下 「おっと。」
刑事・部下 「可哀相に。」
多枝 「私のせいだ。私が誕生日だったばっかりに幸治先輩は…」

   カコ、ベッドの上で立ち上がり、メガホンで叫ぶ。

カコ 「幸治先輩がそんな簡単に死んじゃうわけないでしょ。
    サプライズだよ、サプライズ!」

   棺おけから幸治が登場。

幸治 「嬉しいよ多枝、多枝は僕が死んだらこんなに悲しんでくれるんだね。」
多枝 「幸治先輩?人工衛星にあたったんじゃ・・・」
幸治 「あんなのサプライズに決まってるじゃないか。」

   幸治、棺おけに供えられていた葬式花を手に多枝にせまる。

幸治 「君のその柔和でこぢんまりとしたたたずまいは、
    大井林町一号墳から出土した埴輪片をもとに作られた
    人物埴輪そのものだ。僕の妻は君しか考えられない。
    さあ多枝、結婚しよう!」
多枝 「幸治先輩!」

   遺影が十字架に、棺おけが祭壇に変わる。結婚行進曲が流れる。
   部下がいつの間にか神父の格好になって、祭壇の前へ歩み出る。

神父 「(片言の日本語で)新郎永田幸治、新婦五木多枝。
    汝らはお互いに信頼し、尊敬し、助け合いながら生活の伴侶とし、
    神の御前に永遠の愛を誓いますか?」
多枝・幸治 「誓います!」

   クローゼットから新郎の格好をした陽彦が登場する。

陽彦 「多枝ちゃん!多枝ちゃんが俺以外の男と結婚するなんて!」
神父 「OH MY GOD!」
幸治 「なんだね君は!」
刑事 「家宅侵入罪で逮捕だー!」
陽彦 「多枝ちゃーん!」
多枝 「ごめんねハルちゃん。
    私、ハルちゃんの分までうーんと幸せになるからね!」

   陽彦、幸治と刑事に脇を抱えられ、クローゼットに去る。

神父 「アーメン。」

   神父、クローゼットに入り、扉を閉める。
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