甘い女と月の男

ついに決着

あたしは誰もいない屋上で泣いていた。

梨央奈とビアンカから着信がたくさん来てたけど、「ちょっと調子悪いから保健室にいる」って嘘ついちゃった。

たぶん今頃保健室にもいないあたしを探して校内を走ってるのかな。

あの子たち、なんだかんだ友達思いだから。

でも、この屋上には入ってこられない。

あたしが鍵持っちゃってるから。

だって今は一人になりたくて。

ただ泣きたくて。

きっと2人がそばにいたら苦しかった事とか全部吐き出しちゃう。

でもそれはだめだから。

東城の令嬢としてあたしは強くならなきゃいけない。

そう自分に言い聞かせて、「今だけだから」と1人泣いた。


その時。

ダンダンダン!

「凛華ちゃん!いるの!?開けて!!」

という郁君の声が聞こえてきた。

でも他の声は聞こえないから郁君1人だけみたい。

あたしはドアの近くまで行って、「いるよ」と一言だけ答えた。

今開けたら、だめなの。

あたしが崩れちゃうし、泣き顔も見られちゃう。

嫌だ。

「郁君。心配してくれてありがとう。もう大丈夫だから教室戻って?」

できるだけ落ち着いた声を心がけて言ったつもりだったけど。

「戻らないよ!そんな悲しそうな声してる凛華ちゃん置いてけない!」

え?

あたしそんなに悲しそうな声してたのかなあ。

そうかあ。

郁君だから安心したのかな。

ふっと涙腺が緩んで涙があふれた。

「うっううー……」

「凛華ちゃん!?泣いてるの!?」

「な、いてな、い」

「嘘でしょ。開けてよ」

あたしは覚悟を決めてドアを開けた。
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