暴走族に恋した私
「へー、名前は?」
「…知ってますよね。」
怖気づいたら、負け…そう自分に言い聞かせて、睨んでみる。
けれども驚いたり怖がったりせず、また笑いだす。
お腹を押さえて笑う姿に少し怒りさえ覚える。
「由奈ちゃんだろ、男気満載だねー。」
「俺は颯人っていうから、呼び捨てでいいよ。」
私は朔の後ろに再び隠れる。
「へー…朔のこと気に入ってんだ。」
「捕まえた張本人なのに。」
捕まえた張本人だけど、やっぱり知り合いのほうが安心する。
それに…この状況だと頼れる人は朔しかいない。
朔だって敵だけど。
そう思うと心苦しく感じる。