神様の憂鬱
「あれっ?」

と小さな声が聞こえた。

「ねぇ?」

と彼女がボクに呼びかける。

ボクの顔が自分を向いているのを確認して、

「こっちの白いカップはわたしのよ? あなたのは黒いほう」

「知ってるよ。ボクが昨日使ったのは黒いほう」

「じゃあ、どうして白いカップが出ているの?」

「紗良奈の分」

「わたしの?」

「紗良奈にも作ってあげようと思って」

「そう」

彼女が小さく呟く。

「わたしの分も作ってくれようとしたんだ」

薬缶からお湯を注ぎながら彼女が言った。

こぽこぽという音にまぎれて、「ありがとう」が聴こえた。

あと、

「怒って、ごめんね」

という囁きも。

で、二人してソファーに座って、コーヒーを飲んだわけ。

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