神様の憂鬱
すぅすぅ、と寝息が漏れはじめる。

もっと早くにこうしていればよかったのかもしれない。

余計なことなどしなければ、いつも以上に彼女を苦しめずにすんだのかも。

心の奥が、ズキズキと痛んだ。

痛みを感じるなんて、初めてのことだった。

しかも、自分以外の誰かのために。

あの男が絶望に打ちひしがれて叫ぼうが、

あの女が悲しみを伴って部屋を後にしようが、少しも心は痛まなかったというのに。

今まで出会ってきたどの人間が不幸でも、一向に気にならなかったのに。

今は――

紗良奈が悲しむのが辛い。

彼女が涙を流すのがやるせない。

どうしてやることもできない自分が、ひどく不甲斐(ふがい)ない。

ボクは、こんなにも無力だったのだろうか?

力を使えないから?

でも――

人間はもっと無力なのに――

どうしていいのかわからなかった。

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