♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「あ~?ああ、あの子の事?いいわ、楽しい物見られて気分が良いから、特別に教えてあげる。

…殺されかけた事があるのよ、あの子。」

「こ、殺されかけた事!?」

春子と礼士は、顔を見合い驚いた。

「そう…私もあの子から聞いた話だけれど。

部活帰りのある日の夜道、一人で家に帰る所を暴漢に襲われ、押し倒され馬乗りの状態から、首を絞められて殺されかけた。

でも、必死で抵抗する中で、偶然つかんだ、先が鋭く尖った石で、その暴漢の額目掛けて何度も打ち据えたらしいわ。

たまたま現場を通りかかった警察官に、その暴漢は取り押さえられて事なきを得たけれど、暴漢の方も、恵に反撃された額から、血がドクドクとあふれ出していた見たいで…」


ひどく疲れ切った表情を浮かべ、嗚咽を漏らしながら、騒ぎを聞きつけた引率の先生や生徒達に見守られている恵。

その様子に、春子はひどく同情した。

「それであんなに取り乱して…可哀想に。

つらい事を思い出しちゃったのね。

まだあんなに酷くおびえた表情をして…」

「…本当に、そういう風に見えるか、乙女座?

俺様にはあの表情が、おびえではなく、安堵している様に見えるが?」

「安堵?何を言ってるんです、先輩…

って、乙女座?俺様?

ま、まさか今の先輩!?」

「そうさ乙女座、今の俺様は、あのおっとりした安宮礼士じゃねえ。

…もう一人の礼士、ヴァンパイア礼士様だ!」

「なっ、何でこのタイミングでもう一人の礼士が…」

立て続けに周りの状況が急変したせいで、春子は戸惑いを隠せなかった。

そんな春子に、ヴァンパイア礼士は言った。

「もう一人の礼士が現れた原因?今更解説が必要かね?

じゃあ、ついて来な?こっちだ!」

「あっ、ちょ、ちょっと!」
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