♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~
「さっ、才能なんて無いよ私達っ!

どれだけ今まで、私達二人、苦労してやってきたかなんて、あなたに解る訳無いわ!

どれだけ、あの子にとって、輝きの魔術師の呼び名が大切な物かも…」

「もういい加減にしなさい、アナタ達!

ここはそんな大声で会話をしていい場所ではありません!

それに、もう閉室の時間よ、帰りなさい!」

春子と向かい合って座っている恵が、今にも机を乗り越えて春子に飛びかかってきそうなぐらいの剣幕で叫んだ為、とうとう図書室にいた、受付にいた先生が飛んできてしまった。




「…あの発言は、失敗だったよハルちゃん。

まあ幸い、計画当日に、美術部に立ち入る事だけは辛うじて許されたけれど。

あと、愛用の果物ナイフだけは、すり替え防止で肌身離さず持っていてくれるみたいだし。」

「でも、解らないなあ。

だって、いくら元友だからと言ったって、自分が精魂込めて描いた絵を壊しにかかる人をかばうような発言って、普通するものかな?」

「それだけ、静さんが恵さんの中でカリスマ的存在なんじゃない?」

「…」

自分のせいとは言え、そこまで怒られるいわれも無いのにと、春子は少し納得がいかなかった。

「まあ、それにしても…」

「それにしても、何?ハルちゃん?」

「いえ、何でもないです。」

「?」

-それにしても、図書室の先生が最後に言った言葉、

『あら、またアナタ?よほど広報誌が好きなのね。

つい最近もずっと、あの窓際の席で読みふけって…』

礼士先輩は、はあ?って顔してたけれど、それは間違いなくヴァンパイア礼士が広報誌の内容を調べに来た証拠。

…やはり、恵さんと小谷静の関係に気づいた上での調査かしら。-
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