Crier-虚空の願い事-
0.プロローグ
──人気の無い荒れた街の中を、私はただひたすらに走っていた。私の目に飛び込んでくるのは、見たことの無い風景のみ。…どうして?

ここは、私の街のはずだった。小さい頃からずっとここにいたのだ、見たこと無いなんてあるはず無いのに。

違う。ここは、私の知っている街とは違う。私の街は、こんなに荒れてなどいなかった。人もたくさんいて、通りは賑わっていて…。すっかり変わってしまった街の中を、私はただひたすらに走っていた。

ぺた。

瞬間、背筋に悪寒。
近付いてくる足音に、思わず足を止める。

ぺた、ぺた、ぺた。

恐怖で動けない私の視界に映ったのは、ゾンビ…と言って差し支えの無い容姿の化け物。
追い付かれた。そう思いすぐまた逃げようとするが、足に力が入らない。

「あ…ぁ……。」

完全にへたりこんでしまい、立ち上がることが出来ない。ゾンビはもうそこまで来ている。
終わりだ。そう思い、目を瞑ったその瞬間、

…ザンッ!!

突然現れた人の気配。驚いて目を開けた私の前には、
大きな刀でゾンビを斬り倒す、青い服の青年の姿があった。


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