Dear My Brother
タイトル未編集

手のかからない子供だった。

私も、兄も。

手にかけられるわけにはいかなかった。

あんな人間に。

物心ついたときから言われる前にやり、伝えられる前に察した。

けど、決して馴れ馴れしく接するようにはしなかったし、完全に一定の距離を保っていた。

生まれた瞬間から、そうやって生きている兄の姿を見てきた。

実際、私の世話は兄が一番してくれたしその生き方を間違ってるとはとても言えない。

「俺が働けるようになったら2人で暮らそうな」

7つも歳の離れた兄はことあるごとにそう言っていた。

私たちの約束だった。

そして私が12歳、兄が19歳のとき、私たちの約束は叶うことになる。

予防接種、めずらしくそう言われた。

兄は必要なかったが、私の付き添いといつて聞かず結局2人とも車に乗った。

兄が真剣な顔になってこう聞いたのは、一時間程経ったあたり。

「どこに向かってる」

兄らしくない、棘のある言い方だった。

「予防接種と言っているだろう」

世で言うと”父”に当たるこの男の様子もおかしい。

「予防接種を受け付けている病院ならこんな遠くに行かなくてもある」

小学校を卒業したばかりだった私にもそのことはわかっていたが、普段見せない兄の態度に気圧されて何も言えなかった。

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