クローバー的恋事情
家の中まで聞こえたみたいで、お母さんまでもが出てきた。夜に外で話していたら、近所迷惑にもなる。中で話した方がいいかな。長い話になるかな?


「いえ、すみません、帰ります。渉さん、後日、改めて来ます。お休みなさい」


藤沢さんは頭を下げて、帰っていった。


「後日って、なんのために来るんだ?」


「さあ?」


今日の藤沢さんの行動は摩訶不思議だ。送りたかったから、送った?

手を繋いだのも繋ぎたかったから、繋いだようだった。

こんなことをされたら、少しでも私に好意があるのではないかと勘違いしてしまう。

小島さんという彼女がいるのに、あの人は何をしているのだろう。何でこんなにも私を混乱させるの?


「葵、考えすぎるなよ。幸紀のことなんて考えなくてもいいから」


ソファーの上で膝を抱えて丸くなっていた私の頭をお兄ちゃんが軽く叩いた。


「あの人、おかしいよね?」


「あはは。うん、おかしいやつだ。だから、相手にしなくていいんだぞ」


うん、相手にしないのが一番だ。
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