夢のような恋だった

「言わないで終わる事もできた。でも、そうしたら一生壱瑳に嘘ついてなきゃいけない。頑張れとかおめでとうとか、言葉だけで言ったって意味ないよ。壱瑳はどうせ気づくもん。
だったら言いたかった。どれだけ壱瑳を困らせても、この先一生騙すよりずっといいって思って……それで……」

「琉依ちゃん」


しゃくりあげる琉依ちゃんをギュッと強く抱きしめた。

なんて言ったらいいか必死に考えたけれど、いい言葉は浮かばなかった。

兄弟に恋愛感情を抱くなんておかしい。
それも確かに事実かもしれない。

でもみんな理解していて、それでも告白という道を選んだ彼女の判断が、間違いだとは思えなかった。


「私、皆に帰るように言おうか?」

「……ん」

「時間が欲しいなら、私がそう伝えてくるよ」


躊躇しつつも頷く彼女の背中をポンポンと叩いて、私は外に出ようと靴を履き直す。
と同時に、扉がどんどんと叩かれた。


「琉依」


壱瑳くんの声だ。


「琉依、開けて」


いつもの通りの淡々とした声に琉依ちゃんは顔を真っ赤にして耳を塞ぐ。


「……ヤダ! 帰ってよ。そのうち帰るから」

「琉依、開けて」

「今はやだって言ってんでしょ。大丈夫。ちゃんと学校も行くから」


どうしてもこの場では折れられなさそうな琉依ちゃんを守りたくて、私は壱瑳くんを説得しようと決める。
鍵に手を伸ばした時、壱瑳くんとは別の大きな声がした。

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