ジャスミン
『俺はあいつの会社も家も分からない…!』

情けなくなりながらも、気を持ち直すと携帯を取り出す。


『はいっは~い♪只今、美香りんとラブラブ中の「そんなんどうでもいいっ!美香さんに代われっ!」』

『…何かあったのか?』

颯太郎の余裕のない声に大樹も動揺を見せた。

『茉莉の身が危ないんだっ!頼む!「もしもしっ!どういうこと!?茉莉に何があったの!」』

大樹の携帯から漏れた声を聞いていただろう美香が、大樹から携帯をひったくり颯太郎に問い詰める。

『実は…。』



『…そういうことね。颯太郎さんは今、会社?』

『あぁ。出たところだ。』

『10分…ううん、5分待って。今から向かうから!』

『えっ?美香本気!?ここから会社まで5分じゃ…。』

『うるさいっ!間に合わせて!でなきゃ別れるからっ。』

電話越しの声に大樹のひきつっている顔が浮かぶ。心の中で大樹に同情しながらも、今は茉莉が最優先のため口は挟まない。

『…美香、しっかりシートベルトしてね。』

『もちろん!ってキャー!』

悲鳴が聞こえた後、電話が終了を告げた。
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