ジャスミン
颯太郎の一つひとつの言葉が茉莉の心に染み渡り、ガチガチに固まっていたものさえ簡単に解していくー。


『私ね、仕事でも何でも女ってだけで、まともに取り合ってもらえなくて、だから男の人以上に頑張らなくちゃってずっと思ってやってきたんだ。毎日が肩に力が入ってる感じ?でも颯太郎に出会って、それが凄く軽くなっていくのが分かるの。今は前以上に毎日が楽しいって感じてるよ。』

茉莉は今思うことを素直に言葉に乗せて伝える。


『なんか俺たち似た者同士だな。』

『うん…そうかもね。』

二人で赤や黄色のコントラストを描く木々を見つめる。

(こんな穏やかな時間を過ごしたのはいつぶりだろう…。)

茉莉と颯太郎はこの穏やかな時間が永遠に続くよう澄みきった秋空に願った。



実際には、二人の元へと着実に忍び寄る足音に気づいていなかったー。
< 163 / 348 >

この作品をシェア

pagetop