ジャスミン
『おまえ実は俺より冷静な奴だったんだな。』

大樹のことを初めて心底尊敬したかもしれないと颯太郎は心の中だけで思う。

『どうかな?俺も自分のことになると案外分からないかもな。』

そう言いながら煙草を置いてあった灰皿に押しつぶすと携帯を取り出す。

『わっ!やばっ‼︎美香りんと約束してたんだったわ。颯太郎ゴメン!帰るわ。』

慌てて帰り支度をする大樹に颯太郎は先ほどのことが強ち嘘でないことを実感する。

『今日はサンキューな。助かったわ。』

『お、おう!じゃあ、明日な!』

バタバタと部屋を出て行く大樹の背中にお礼を言う。

あっという間に静けさを取り戻した部屋に物足りなさを少し感じながらも袋を持つと、散らり放題のテーブルの上を片付けていく。だが、心の内はつっかえが取れたように何だかスッキリとしている。

『まさか、大樹に教わるとはな…。』

独り言を呟く颯太郎は未来を見据えた前向きな気持ちになっていたーー。
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