ジャスミン
茉莉も颯太郎も早紀江に会ったことは敢えて話さなかった。仕事のことやテレビの話などたわいない会話をしていく。

映画を観ようということになって着いた先はこの辺りでは一番大きな規模のショッピングモール。クリスマスイヴということもあり、辺り一面イルミネーションが施されていて各専門店からはクリスマスソングが流れている。

茉莉は久々に来た場所にあちこちと視線を動かす。そんな茉莉の様子を微笑ましく見ながら颯太郎は彼女の指の間に自らの指を絡ませた。

一瞬ビクッとするものの、颯太郎の顔を見上げると頬を紅く染めて手の力を込める。しっかりと密着させると、目的地まで寄り添いながら歩いて行った。


二人で初めて観た映画は切ないラブストーリーもの。互いにすれ違い、一度は別れを選ぶものの再会を果たす…颯太郎はなぜこの映画を選んでしまったのか⁉︎という後悔、茉莉に至っては完全に感情移入してしまい涙が止まらない二時間余りを過ごした。

化粧直しをして泣いてしまった顔を何とか元に戻すため奮闘した茉莉はロビーで待つ颯太郎の元に躊躇しながら戻る。

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