ジャスミン
『颯太郎。明日見合いの席を設けました。』

『は?見合い⁉︎』

いきなり飛び出した意味不明な状況にさすがに狼狽える。しかも母の口ぶりからどうやら決定事項のようだ。

『何を急に言い出すんですか…。』

明らかに動揺している息子に構うことなく早紀江は話を続ける。

『あなたももう良い年齢でしょ?最近は仕事の方も頑張ってるみたいだし、あなたの結婚は金子グループにとって大切なことなのよ。』

『俺に選択権は…。』

『ないに決まってるでしょ。私があなたに相応しい女性を選んだから安心してちょうだい。』

『……。』

颯太郎は自分に相応しい女性と聞いてすぐさま頭に浮かぶ存在に胸が苦しくなる。

『とにかく、先方とは打ち合わせ済みだから明日はそのつもりでいてちょうだい。』

言い終えると、もう用はないとばかりに追い出される。

『まじかよ…。』

颯太郎は自室に戻ると頭を抱える。

母は一度言い出したら何があろうと意思を曲げない。昔からそれで随分痛い目に合ってきた。
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