ジャスミン
『あぁ。…いったいどうしたんだ?』

俺の質問に口を真一文字に閉じている様子に言いづらいことなんだと悟る。


(これ以上、彼女のことを困らすことはしたくない。)

今、自分に出来ることを考えた。

『じ、じつは「ふっふっくっく…はっは。」

案の定、茉莉は唖然としている。

(…でも、これでいいんだ。)

『くっく…ごめん。あんまりにも凄い顔をしてるから、つい。』

俺の言葉に茉莉は自分の顔を両手で隠す。暗がりでも彼女の顔が赤くなってきたのが分かる。

少しやり過ぎたかと後悔し始めたところで彼女が肩を震わせて笑い出した。

『ふっふ…なんか可笑しい。』

茉莉の笑顔が見られたことに俺も自然に笑うことが出来ていた。


ポツリ、ポツ、ポツ…

空から雫が落ちてきたのに気づくと茉莉の腕をひき、近くの軒下に避難する。

『…雨、止みそうにないな。』

颯太郎は呟くように言うと、視線は空のままに自分の気持ちを伝えるかのように茉莉の手を繋ぐ。

『…うん。』

茉莉もギュッと握り返した。
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