その扉の向こう側
「お姉ちゃんは好きな人いるの?」


映画館からの帰り道、僕は勇気を出してお姉ちゃんに聞いてみた。



お姉ちゃんは驚いたような顔をしてから、いつもお母さんがするように笑った。


いやだ


お父さんやお母さん、友達には馬鹿にされてもいい。

だけど、お姉ちゃんにだけはちゃんと聞いてほしい。



僕の顔を見ると、お姉ちゃんは少しだけ考えているような顔になった。


「いないよ」


その言葉に僕は嬉しくなり、思わずお姉ちゃんの手を力いっぱい握って、思い切り振って飛び跳ねた。


「じゃあ、僕がお姉ちゃんの恋人になる」


すると、お姉ちゃんがいつもの笑った顔になった。


その顔が一番好きだよ


「きみが高校を卒業したらね」


「お姉ちゃんだって、まだじゃん」


そう言って、僕たちは信号が青になるのを待っていた。
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