胡蝶蘭
「ち、近いよ……っ」


「近付いてんだから当たり前だろ」


「や、やだ……っ。恥ずかしい……っ」


「何赤くなってんの?てか震えてるし」


「だって……っ」


「杏里、かーわい」


「ひゃっ!?」


耳元でそんな囁きされて死にそうにならない人はきっとどこかおかしい。


雅くん、朝から意地悪だ……っ。


「てか杏里。お前また自分の弁当だけ作りやがって。俺のも作れって言ってんだろ?」


「そんな!!私のお弁当なんか美味しくないから!!学食の方が美味しいよ!!」


「バーカ。学食が美味くないから言ってんだろ?てか杏里の弁当が不味いとかあり得ないから」


「そんな事ないよ!!私の作ったご飯は雅くんにとって毒でしかないもん!!」


「あーのーなー」


雅くんが目の前でため息をつく。


それから私を拗ねた顔で見るとデコピンをしてきた。


「きゃう!?」


「俺の言う事全部否定しやがって。ムッカつく。杏里のくせに」


「ご、ごめんなさい……」


「別にいいけどー。杏里の鈍感は今に始まった事じゃねーし?俺もいい加減慣れましたよ」


「鈍感なんかじゃ……っ」


「はいはい。いいから早く行くぞ」


私の手を掴んで歩き出す雅くん。


雅くんと手を繋いでいる事に更に真っ赤になった。


嬉しいけど、周りの人からしたら不快だろう。


こんなイケメンの横に居るのが私みたいなので本当にごめんなさい。


私は雅くんに気づかれないようにそっとため息をついた。

< 3 / 17 >

この作品をシェア

pagetop