さあ、好きになりましょうか。
7.酔っ払いが酔いから覚めた後
朝起きてまず思ったことは、「関谷がいない」だった。


ベッドの上に起き上がって眼鏡をかけた。ベッドのサイドチェストにある時計は「AM 6:49」と表示されていた。


体はもう大丈夫だった。昨日あれだけ頭が痛くて全身が重くて動かせなかったことが嘘のようだった。


あたしはヨロヨロと立ち上がって台所まで行ってやかんに水を入れて火にかけた。酔いにはしじみの味噌汁がいいと聞いたことがあって、酔っ払ったその日の夜に余力があればインスタントのしじみの味噌汁を飲むことにしている。今日はすっかり酔いが覚めた後だけどまあいい。


お湯を沸かしている間に思い出して玄関まで移動した。ポストの中にはここの鍵が入っていた。関谷があたしが言ったように鍵を閉めてくれたようだ。


お湯が沸いた。インスタントのしじみの味噌汁を作って部屋で飲んだ。熱い味噌汁が昨日酷使した胃にじんわりと染み渡って、あたしはほっと息をついた。


あたしは酒には弱いけど、どんなに酔っ払っても意識ははっきりしているタイプだった。どれだけ飲んで、どれだけ苦しくて、どれだけ人に迷惑をかけて、誰に介抱されたか。あまり思い出したくないものだけど、記憶にはしっかり残る。目を閉じない限り一瞬でも意識を飛ばしたことは今のところない。


「はああああああ~…………」


味噌汁を飲み干して、あたしは盛大なため息をついた。


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