お見合いの達人

4.晴れのち雨

「随分ごゆっくりだったのね?」

席を立って、

カップを戻しに行くと、

腕組をした浜木薫子がツンとした表情で立っていた。

「私の自由でしょ?客ですよ?」

「それはそれは、ご利用いただき感謝しております。



本当にお客なのかしら?




私に対する当てつけのつもりなんでしょ?

土日が定休の自分の身分をひけらかしに来たんじゃない?


聞いたわよ?

大した知り合いでもないくせにどうしてもって誘ったんですってね?

彼の知人て言うなら知ってたんじゃない?

私、彼ともうすぐ結婚するの。

ちょっかい出さないでいただきたいわ。


それとも私がここを寿退職したら、

もしかしたらまたここに後戻りしちゃうかもって心配してる?

ご心配なく、お呼びでないわ?

私の変わりはあなたにはできないでしょうから、もっと優秀な人をお願いしておくから!

だから早くお引き取りください、

貴方はあそこでお茶くみと電話番してるのがお似合いよ!」

恐るべし浜木薫子

どうしたらそこまで妄想で人を疑えるのか?

そこまで卑屈なのか?

呆れて言葉もでない。


「……」


「なんとか言ったらどうなの?」

苛立ちに身を震わせる彼女に、これ以上興奮させるつもりはない。

「美味しかった。いいお店よね。

もう、ここには仕事以外っでは来ることないから」

さすがに彼女も気がついたようで、罰の悪い顔をして、私から目をそらした。

文具レジ横にいたミーコちゃんに「じゃ」と、声かけて通路に出た。

大体私は、ここに来るべきではなかった。


あいつさえいなかったら来ることなんてなかった。

そうよ、元はといえばあいつのせいじゃない。

あいつが来たいっていったんじゃない

先にさっさと帰っちゃって、ったく、どういうつもりなの?














< 166 / 198 >

この作品をシェア

pagetop