佐藤さんは甘くないっ!
「土曜日は柴に会えるのを楽しみに仕事を頑張ったのに帰ったらいなかった」
「す、すみません……」
「ケーキは全部一人で食べた。虚しかった」
「……申し訳ございません…」
「冗談だよ。あの日、あいつが来たんだよな。何を言われたかは想像がつく」
思い出しても身震いしてしまいそうな悪意。
寒気を感じて思わず腕をさすると、佐藤さんがぎゅっと抱き締めてくれた。
伝わる熱が心地良くて涙が出そうになる。
だけど物足りなくて、身体を反転させて佐藤さんの胸にそっと頬を寄せた。
佐藤さんが嬉しそうに笑った気配がした。
「……最上のこと、俺の中ではとっくに終わってた。だからわざわざ柴に話すつもりもなかったし、正直少し忘れかけていた」
最上さんが聞いたら泣き出しそうなことをさらっと言ってしまった。
わたしとしては嬉しい反面、同じ女子として複雑な気持ちである。
優輝に存在を忘れられてしまうようなものだと思うと……寧ろわたしは忘れたくても忘れられなかったのに。
佐藤さんにとって最上さんは本当にただのパートナーでしかなかったのかな……。
「宇佐野に聞いたんだろうけどな……俺は柴に一目惚れしてから、ずっと柴に良いところを見せたくて仕事頑張ってきたんだよ。……不純な理由で悪かったな、おい笑うなよ」
宇佐野さんに聞いていた以上の驚きがあった。
笑うどころかびっくりしすぎてリアクションすら取れない。
……わたしのために、仕事を頑張ってた?
そんな佐藤さんなんて想像がつかない。
この2年をかけて追い掛けていた佐藤さんは、ずっと前だけを見ているんだと思ってた。
わたしのことなんか振り返らないで、ずっとずっと。
本当はわたしのことを見ながら走ってくれていたなんて…………そんなの信じられないし、……嬉しすぎる。