佐藤さんは甘くないっ!

「いっただきまーす!」

「……い、いただきます」


目の前で大口を開けているのは宇佐野さん。

そしてテーブルの上には、もう所狭しと並べられた料理の数々。

……え、ただのランチだよね?

ディナーのコース料理とかじゃないよね?

見ているだけで空っぽのはずの胃がどんどん膨らんでいく気がする。


「馨からいっぱい食べさせろ、って指令があったからさー」


ひひひ、と楽しそうに笑う宇佐野さんの顔が恥ずかしくて見れなかった。

そしてわたしも馨呼び仲間に加入できたことが無性に嬉しかった。

仕事中は佐藤さん呼びを崩すつもりはないけど……宇佐野さんの前なら良い、かな。


「これも宇佐野さんのお陰です。本当にありがとうございました!」

「柴ちゃんと馨が頑張ったからだよ、良かったねぇ」


自分のことのように嬉しそうに笑ってくれる宇佐野さんが眩しく見えた。

なんて良い人なんだろう……涙が出てきそうだ。

感動していたらいつの間にか、ご丁寧にお皿に取り分けられた料理が並べられていた。

その多さから、思わず頬が引き攣る。


「でも、これ全部食べるまで帰れないからね」


にこっと効果音を付けて笑う……悪魔だ、悪魔がいる。

しかし食事を抜いた所為で佐藤さんに多大なる迷惑を掛けた責任があるので、わたしはおとなしくお箸をもって闘いに挑んだ。

わたしがこうしてランチをしているのは、馨さんが食事を与える任を宇佐野さんに頼んだからである。

当の佐藤さんはというと…。


「柴ちゃんは馨のことが心配?」
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