Caught by …


 美味しいお酒と談笑のおかげか、初めてのバーで緊張していたのも忘れて楽しんでいた。

 けれど、ふとジェーンを見るとグラスをぼんやりと見つめていて、その横顔は色気があって、それでいて切なそうな表情なので話しかけるのを躊躇してしまう。

 そんな私の視線を感じたのか、顔をあげたジェーン。彼女は少しだけ笑ってカクテルを煽った。

「ここにはよく来るの。仕事で疲れた時も、嬉しい事があった時も……恋愛でうまくいかない時もね」

 ジェーンの視線の先には、カクテルを出してくれたバーテンダーの姿。

「彼、ダレルっていうんだけど、ああやってお客の愚痴や相談を聞くのが上手くて彼目当てでここに来る人も多いの。……私も、その一人なんだけど」

 自嘲気味な笑みを浮かべる彼女の伏せられた目蓋、長い睫毛が影をつくる。

「本当に初めは、ただの話し相手だったのに、いつからか彼の事が気になってて、だけど、相手はこういう仕事の人間だから本気になったら駄目だって、違う人と付き合ったりするんだけどね」

「……彼以外は、好きになれない…ですか?」

 私の問いに彼女は何も言わない。多分、そうなのだろう。

「今日、本当はボーイフレンドとの約束があったんだけど、喧嘩して別れちゃった!それで、またここに来てる。彼に、会いに」

 明るく笑って見せる、その表情に隠した気持ち。

「年上からの助言としては、バーテンダーには気を許しすぎないって事かしらね?」
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