黄昏に香る音色 2
「ただの普通の音楽…?」

ビルを出た明日香の携帯電話に、着信があった。

電話に出ると、横田からだった。

「ああ…ダウンロードしたやつから、聴いたんだが…別に、頭がおかしくなるとか、気分が悪いとかは、ないみたいだ」

横田は昔、河野和美のマネージャーをやっていた。

和美は日本を去るとき、明日香に、横田を紹介していった。

明日香は学生時代、いろいろお世話になり、

今は、明日香のマネージャーになっていた。

「ただし…」

横田は言葉を切り、

「毎日聴きたくなる程…BGMとしては、最高らしい」

「BGM…」

明日香は呟いた。

(あの人の音楽とは一番程遠い言葉…。)

しかし、

インストなら、仕方ないのだろうか…。

「それと…もう一つ」

「もう一つ…?」

横田は勿体ぶる。

「今とれる音は…昔のと違うという噂がある」

「音が違う?」

「まさしく、その通り!演奏は同じだが、音の感じが違うと」

明日香は考え込んだ。

隣で、和恵が不思議そうに、明日香を見上げている。

「それは、いつからなの?」

「わからない…少なくても、あの事件以降はないと思うが…」



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