黄昏に香る音色 2
「香里奈…あちらの男の子は?」

香里奈の髪を、撫でてあげながら、明日香がきいた。

香里奈ははっとして、明日香から離れた。

明日香に、甘えているところを見られた。

姿勢を正すと、

「お、同じクラスの飯田くん」

香里奈の紹介を受けて、
直樹は頭を下げた。

「飯田直樹です。速水さ…」

「かわいらしい彼氏ね」

直樹の言葉が、終わらないうちに、

明日香が話し出した。

「え…」

直樹は、彼氏の言葉に舞い上がってしまう。

「よかった。ちょっと、心配してたのよ。香里奈って、女の子ぽくないじゃない…彼氏なんて、できるのかしらと心配で…」

明日香は、直樹を見つめた。

「本当によかった。彼氏ができて…それも、こんな素敵な。ありがとうね」

お礼を言われ、戸惑う直樹。

「少しがさつなところがあるけど、許してやってね…まったく、誰の影響かしら…」

明日香は、チラッと隣を見た。

「あたしの影響と、言いたいのか」

いつのまにか、里美がそばまで来ていた。

明日香はクスッと笑うと、そのまま歩きだした。

「無視かい!」

里美が怒鳴る。

「さあ、ダブルケイに帰りましょう」

明日香は里美を無視して、微笑んだ。
< 118 / 539 >

この作品をシェア

pagetop